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第四章
「そちは案内役なのか?」
きっとガイド役の青年が言っていた、ばあや様の住居まで導くという人物なのだと考えを巡らせました
コクリと頷く相手は、そのまま鷹揚に手招きします
一本の奇妙に平べったい山道に誘導致します
「我々に今からついてこいという事だな?」
「その様でございますね」
「仕事が早いな、感心だ」
「ええそのようで」
ウズウズ先を急ぐ彼にとっては、実に願ってもない有り難き展開でした
一行に示された路は
先程迄の滑落したらば確実に死ねる~
切り立った断崖絶壁の、人一人すり抜けるがやっとの狭い道なりとは大違いの足場の良い、緩やかな傾斜でした
『御高齢の主が歩き易いように整えられたものだろうな……』
一行が最後の力を振り絞り登り切ると、視線の先
ボンヤリ灯りが灯された、ビッシリ石で覆われた小屋が現れました
きっとここが探し求めた隠遁先の住居に違いありません
日暮れの時間的に、きっと住人の夕食時なのでしょう
温かな夕餉の香りがゆったりと、周囲に優しい匂いを振りまいておりました
幸福の食欲をそそる香りにグゥウウウと、お腹が盛大に鳴りました
**************
よれっよれの疲れ果てたファハドら一行
無口な背の高い案内役のリードで温かな明るい住居に通されました
「いらっしゃいませ、この様な遠きあばら屋まで」
ハッとファハドが顔を上げると
柔らかな微笑みを向ける美しい女性がひとり、優しい笑顔を向け立っていました
流石に深い皺をいくつか皮膚に走らすものの
腰も決して曲がらず極上に品良く、足腰も未だしっかりさせているように見えました
なによりも姿勢もピンと真っ直ぐ!!
驚くべき、かくしゃくとした女主人でした
~伝聞では、最低でも90の齢をとっくに
いいえ実際は、計算では100歳すらをも越えているは明白です
にわかには信じられません
ハタと顔を見合わせ、眉を寄せ困惑の色を隠せませんでした
「~お坊ちゃま、本当にこの御方が我々の目指すお方様でございましょうか?!」
「間違いないはずだ」
「いえーーーとても
こう申してはなんですが
~お妃様よりお伺いしたイメージとは全くの別人、思い浮かべる想像と違い過ぎます
ええーーーー
私の母者よりもこのお方様の方が、うんとずっと全てがお若いでしょう
下手をすれば今現在の我々よりも、ご壮健にさえ肉体的にもお見受け出来るのですが……?!」
「ぁあ相違ない、同意する
~絶対に若いだろう
私も実は非常に驚いている
~想像するに、このような厳しい場所で逞しく従僕とだけで女一人で生き抜くと心に決めた以上
怪我や病にかからぬよう自制し
予防医学として御健康には人一倍、繊細に日々気を配られているのだろう
今のあの麗しきお姿は細心の鐵の努力の賜、結晶に相違ないのかも知れぬな」
「きっとそうでございましょうねぇ」
強く気を取り直したファハドはキリリと姿勢を正し、恭しく身分等々自己紹介を披露致しました
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