やっと

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「で、こっちが本条伊織くん」  そう紹介されて、本条くんはにっこり微笑んだ。みっちゃんの彼とは違うタイプで可愛い男の子だ。  学校帰り、みっちゃんがカフェに寄って帰ろうって言った。限定フレーバーが欲しいって。私も飲みたかったし、「いいよ」って約束したんだけど。  みっちゃんと一緒にカフェに入って注文したら、店内にはみっちゃんの彼である高瀬くんと、見たことがない男の子が並んで座っていた。 「ね、本条くん、可愛いでしょ。聖良とお似合いだなって」  みっちゃんが私の耳元にこそっと囁く。  お似合いって言われても。  ふと本条くんを見れば彼と目が合って、にっこり微笑まれた。  ……あ、この人。自分がどういう表情見せればウケるか知ってる人だ。  明らかに自分に自信がある。そんな様子が見てとれた。 「ごめん、みっちゃん。私、そんな気になれないから」  のんびりフレーバー飲みたかったけど、なんとなくこの人とじゃ美味しく飲めない気がした。残念だけど帰り道に歩きながら飲んで帰ろう。 「え?ちょっと、聖良~?」  みっちゃんの呼ぶ声が聞こえるけど、私は振り返ることなくカフェを後にした。
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