やっと

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 なんで私は恋に落ちないんだろう?  あれだけ恋多きみっちゃんのそばにいて。  なんで恋したいって思わないんだろう?  道行く人を見れば、あちらこちらで仲良さそうにしているカップルを見かける。寄り添って手を繋いで、仲良く歩いて。  そういうのに憧れないわけじゃない。  だけど、そうしたい人が現れないんだ。  どこにいるの?  私が探している人は。  そもそもどんな人なの?  私が、心の奥で恋焦がれている人は。 「ふっ……」  思わず声に漏れて笑った。  なんだか自分が滑稽に思える。  本当はそんな人いないんじゃないの?  『恋に恋してる』状態。もしくは怖くて恋に踏み込めないんじゃないの。 「いいなあ、みっちゃん」  あんなに呆れていたのに。今となってはみっちゃんが羨ましく見える。  恋に一直線で、恋愛至上主義。  振り回されて迷惑することもあるけれど、自分の欲望に素直で裏がない。  世の中こんなにたくさんの人がいるのに。  なんで私は『たった一人』にこだわっているんだろう。 「危ない!」  そんな声が聞こえてきたけれど、考え事に心を奪われていて反応が遅れた。  ふと意識が浮上した時には、ギュッとした圧迫を感じていた。  瞬間。  心の奥の鍵が、カチャッ、と。  開く音がした。
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