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「大丈夫?」
圧迫されていたものから解放された。
どうやら圧迫は抱き寄せられていたみたいで、認識したとたんに頬に体温が集中する。
「あ、あああああ、あのっっ」
「あ、ごめん。いきなり触れてビックリしたよね。でもキミ、ぼぉっとして今にも車に轢かれそうだったから」
「え、えぇ!?ごめんなさい!気がつかなくて」
まさかそんな状態とは思わず。危険な状態だったことに狼狽える。
……ううん。それだけじゃない。
胸の鼓動が収まらない。
危険な目にあったから?
いきなり免疫ないところに抱き寄せられたから?
どれももっともっぽいけど、それだけじゃない。
だって、胸の奥から溢れてくる気持ちがある。
逢いたかった。
ずっと探してた。
ずっとずっと待っていた。
あなたに逢えるこの時を。
「……大丈夫?」
「え?」
「どこか、ぶつけたかな?」
「あ、いえ。どこも」
そう答えながら、彼がなんでそんな質問をしたか気づいた。
ぽたぽた、ぽたぽた。
涙が溢れてとまらないからだ。
「あ、あれ。なんでかな」
掌でごしごしと、涙をぬぐう。
それでも次から次へと、涙は止まらない。
まるで今までせき止められていたものが解放されたかのように。どこまでもあふれ出してくる。
「はい、使って」
彼がそっとハンカチをさしだしてくれた。
言葉に甘えて、そのハンカチを受け取ろうとした時、彼の手に触れた。
やっぱり。
この想いは。間違いない。
私は。
この人に逢うために、今、ここにいるんだ。
「やっと……やっと、逢えた」
彼に借りたハンカチで涙を拭いながら、私は彼に微笑んだ。
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