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私は泣きながら鉱に電話して瑞穂に連絡を取ってもらった。
でも瑞穂は、会わない方が良いといって会ってくれない。
そうだよね。私のせいだ。
瑞穂を深く深く傷つけたんだ。それなのに今更なんだって感じだよね。
だけど、私は今度こそちゃんと言うんだ。
長く離れていた年月の分。取り戻せなくても、あの時の瑞穂に謝りたい。
何度、携帯へかけても出てくれない。
鉱から私の番号だと伝えてもらったのに。
避けられている。嫌がられている。
わかってる。自分勝手な行為だ。わかってても、どうしても。
お願い、瑞穂。
諦めたくない。
もう一度、許されるなら瑞穂と友達にもどりたい。
瑞穂の実家へひとりできた。
小学校からもう、ずっと来ていなかった。
小さい神社の横にある赤い屋根の一戸建て。
マンションの私には憧れだったな。
懐かしく思いながらも、呼び鈴を押す。
久しぶりに会う瑞穂のお母さんは、そんなに変わってないように見えた。
「瑞穂ねえ、もう彼と一緒にすんでるのよ」と教えてもらう。
小学校以来、遊びに来なかった私を少し怪訝そうに見つめてくる。
私は曖昧な笑顔でさっさと帰ろうとした。
「まって!」
聞き覚えのあるソプラノの声に、あわてて振り返る。
「瑞穂……」
自分がどんだけ情けない声で呼んだのか、どんだけ潤んだ目で見つめたのか。鼻が赤くなっていく速度も。ぐっしゃぐしゃに泣き喚きだすまでの短い空白も。
何もかも後で瑞穂から聞いた。
私がなきやむまで、瑞穂と2人でよく遊んでいた横の小さな神社の境内に横並びに座った。
「ご、ごめん。急に泣いてごめんね」
「……うん」
懐かしい、優しい声。だけど、あの頃よりもっと落ち着いている。
まだ涙で滲む目で瑞穂を改めて見る。
久しぶりに会う瑞穂はビックリするぐらい綺麗になっていた。
「あ、えっと、み、瑞穂……久しぶり……ご、ごめんね。いきなり、家に来たり、しつこくしちゃって……その」
「いいよ。こっちこそ」
瑞穂は困り眉のまま微笑む。
あの時から変わらない。そう思いながらも、緊張で心臓が痛い。
ちゃんと言わなきゃ。思っている事を伝えて……それから瑞穂の気持ちもしっかり聞いて、それから、それから。
それでも、また友達になってもらえるか。
「みずほ」
私は言葉に詰まった。
何か一言でも口にすれば、また涙が止まらなくなりそうだ。
鼻頭がツンと痛い。
「……ご、ごめん。本当にごめんなさい!」
勢いよく頭を下げた。
「……なあ、ちゃん。顔、あげて」
その呼び方で、今も呼んでくれるの?
私はゆっくり顔をあげた。
「私、本当は瑞穂の気持ちわかってたの。瑞穂も鉱のことが好きだって、わかってたのに……」
「そうなの? なあちゃん……私、許さない」
「え……」
私は眉根をよせて震えながら瑞穂を見た。
……ああ、また。私。
謝ったら瑞穂が許しくてもらえると思ってた。
瑞穂なら、許してくれると甘えていた。まただ。また私は……。
私は下唇を噛んで、俯いた。
本当になんて自分勝手なんだろう。どうしていつまでも成長できないの?
嫌い嫌い! 私なんか大嫌い!
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