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意識を取り戻すとあの例の場所にいた。
「またこの夢か……ん?」
違う、なにかが違う。夢よりもやけに鮮明で現実みたいだ。
服は一緒だし、靴を履いていない俺の足の裏はまるでここまで歩いてきたかのように汚れている。
まさかここまで歩いてきたってことか?じゃあこれは夢じゃない……?
ためしに頬をつねってみるとじーんと痛みがした。
「嘘だろ、、嘘だと言ってくれ。なんでこんな場所にいんだよ!」
逃げないと、ここから逃げないと。じゃないとあいつが。
そう後ろを振り向くとあの女が立っていた。
どうやら手遅れだったみたいだ。
「なぁ、あんた一体何者だ?何が目的なんだよ!!俺をどうしたいんだ!!」
目が合った時、息が止まった。
そこにいたのはいなくなったはずの慎二だった。
さっきまであの女だったはずなのに。
「慎二…?本当に慎二なのか?」
慎二はなにも答えずなにかを呟きながら歩み寄ってくる。
「どうしたんだよ、なんとか言えよ!!」
俺の言葉なんて聞こえていないかのようにニタニタと笑いながら近づいてくる。
「おい、やめろよ……来るなって!!」
だめだ、もうこいつは慎二なんかじゃない。
慎二の皮を被った得体のしれない何かだ。
逃げようとしても体が言うことを聞かない、もう無理だ。
そして何を呟いていたのかやっと聞こえた。
「また会えたね」
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