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近頃、変な噂をよく耳にする。
深夜12時を回るとになると髪の長い女が道端に立っていてその女に2回会うとあの世に連れていかれるというありがちな話だ。
「で?お前はその女に会ったってわけ?」
「そうなんだよ~助けてくれよ友達だろ?」
目の前で俺に助けを求めてくるこいつが親友の慎二。
優しい奴だけど子供の頃からビビりでこういう都市伝説的な噂もすぐ信じてしまう。
「どうせそんなの誰かが面白がってやってるだけだろ」
「だってさその女異常に青白かったしさ、俺が振り返ったらもういなくなってたんだよ!しかもあの言葉言ってたし」
「…あぁ、確か『はじめまして、また会えるといいですね』だっけ?」
「そう!どうしよう、また会ったら連れていかれるってことだよな?」
こいつは本気で信じているみたいだけど、生憎俺はこの手の話は全く信じられない。
どうせ誰かが面白がって作った噂だろう、わざわざ実演するなんて手は込んでるけど。
「とりあえず1時には外に出ないようにすればいいんじゃない?」
「それはそのつもりだけどさぁ、もし何かあったら電話するしすぐ来てくれない?この通り!一生のお願い!」
一体何回目の一生のお願いだろうか。
まぁでも本気で怖がってるみたいだし、仕方ないな。
「はいはい、分かったよ。ほんとビビりだな慎二は」
「さすが俺の親友!なんだかんだ言って優しいよな、亮は」
こういう時だけ調子いいな、こいつ。
それから2か月ほど過ぎ、俺も慎二もその噂を忘れかけていたころ慎二から電話がかかってきた。
時間は1時4分。
「まさか、な」
妙に嫌な予感がして電話に出た。
「もしもし、どうした?」
「どうしよう、今バイトから帰るとこなんだけどさ。なんか悪寒がするんだよ、しかも前にあの女にあった場所から近いしさ…今から来てくれない?」
「はぁ?今何時だと思ってるんだよ…」
「お願い!!今度なんか奢るから!!」
ドがつくほどケチな慎二がここまで言うとは。
仕方ない
「まじでありがとうございます。今○○にいるから、ちゃんと来てよ!」
俺の家から自転車で5.6分のところにあるコンビニだ。
「はいはい、すぐ行くから」
手のかかる親友だ、でもなんだかんだ言ってほっとけないんだよな。
あの電話から5分後くらいにコンビニに着いた。
慎二は漫画を立ち読みしていて俺を見るなり抱き着く勢いで走ってきた。
「亮~、来てくれてありがとな!!」
「はぁ、まだ近かったし、これで貸し1個な」
「神様、仏様、亮様!まじで助かったよ」
「馬鹿なこと言ってないで早く帰るぞ」
やれやれ、思った以上に元気だし俺いなくても帰れるんじゃないか?
自転車を押して2人並んで帰ると何だか学生の頃を思い出すな。
よく買い食いして慎二はいつも金欠だなんて騒いでたな。
「なぁ覚えてるか?高校の頃…ってどうした?」
慎二のほうを見ると真っ青な顔をして立ち尽くしている。
「あ、あれ…」
指を指しているほうを見ると髪の長い不気味な女がポツンと立っている。
「あいつが例の女か?」
慎二は恐怖で声も出ないようですごい勢いで首を縦に振っている。
恐る恐る近づいてみると、見た目は普通の人間で特に変わったところはない。
なかなか美人だし。
確かに肌は異常なくらい青白いけど。
「あの、こんなところで何してるんですか?まさかあなたが変な噂を流して怖がらせてるんですか?」
女は俺の質問には答えずゆっくりと顔を上げた。
「はじめまして、また会えるといいですね」
ニタァと青紫色の唇を開いて笑いながらお決まりのセリフを言ってきた。
全身に鳥肌が経つのを感じた。
「やめてください、こんなの迷惑なんでやめたほうがいいですよ?」
女は聞く耳を持たす慎二のほうへ向かっていく。
「おい、ちょっと待てって」
肩を掴もうと伸ばした手が空を切った。
正確には俺の手は女の体をすり抜けたみたいだ。
どういうことだ…?まさか、
「嘘だろ…慎二!」
そう叫んだ瞬間、意識が遠くなり倒れ込んだ。
そして最後に見たのは尻餅をついて泣きじゃくる慎二と手を伸ばす女の後ろ姿だった。
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