ハンプティダンプティ、誰も元へは戻せない

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 そう言って私は頭を下げた。彼は変わらず仁王立ちで立っていた。なんなら腕を組み始めていた。おかしい。私は彼の行動に違和感を覚えた。 「なぜ、チャックを上げない」  私がそう指摘すると彼のニヤニヤはより強いものへと変わった。 「どうしてだと思う?」  あ、ヤバいやつだ。私は告白に精一杯で危ない奴に対峙する備えをまるでしていなかった。逃げようにも脱出経路は彼の後方にしかなかった。チャック全開を指摘する恥ずかしさを他人に見られないように、選んだ校舎裏は袋小路だった。  彼が打ち明けた。 「俺、実はタマゴなんだ」 「タマゴ?」  わけがわからなかった。 「俺、露出狂のタマゴなんだよね」  はじめて生で変態を見た。 「なるほど」  私は彼を刺激しないように努めた。 「お噂はかねがね伺っておりますが、それがまさかあなた様でしたとはね」  初めて露出狂と対する私は、露出狂にとってなにが刺激物になるか想像もできず、ふわっとした会話で誤魔化すしかなかった。 「いや、恐れ入りました。頭が高すぎましたね。重ね重ね」
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