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「また会えたね」
私を見た、あなたの第一声はそれでした。
「また」とは?
真新しい景色。昏れる陽の溢れた光が、銀のキッチン台に散らばって美しい。
――あら。
これはなんでしょう。
飛び散った液体と、甘い香りを漂わせる……焼き菓子でしょうか。破片があります。いや、少し焦げ臭いかもしれません。いやいや……甘すぎるかも。とにかく、鼻がバカになりそうです。
あらまあ。そんなに熱心に写真を撮られて、どうされました?
パシャパシャ、って、その音、嫌ですね。
私は見世物になった覚えはないのですけれど。可愛がってくださっているのなら、多目に見てあげても構いませんが。
……首があったら良かったのですけれど、生憎ございませんでして、横目でちろりと覗く程度にしか見られないのが残念です。
細い腕ですね。体は大きいですが、痩せていらっしゃる。
ですが、そんな猫背で行動しては、背が縮んでしまいますよ。もし大きすぎて困っているのなら、私に少し分けてはくれませんか。
……ほら、背が縮んできた。
私が私の血で浮かばないように、あなたの優しい心で、すくってください。
「また」、会えるといいですね。
私という概念があれば。
*
写真を十数枚撮り終えて、僕はひと息、ふぅー……ッと吐いた。
材料で荒れたキッチン、食器だらけの小さなシンク。もうすっかり日が暮れて、いつもの屋外スピーカーが十七時を告げた。
まさか愛猫にスマホのデータを飛ばされるとは。その後も上手く作れなくて、おかげで腹が脹れてしまった。
でも、かわいく作れてよかった。
スマホを眺めてニヤニヤしていると、データを飛ばしたもふもふマンが僕の脚に擦り寄ってきた。キッチンに登ろうとよじよじしてくる。また悪さするつもりだ。さっきもパフェに使うスポンジをふみふみしていた。
「ニャアォ」
「これ、イタズラしないの。さっきカリカリあげたでしょ」
「ミ゙ャウ」
不服ですか。
どうだろう、スポンジ……猫でも食べられるかな。
そうこうしているうちにアイスがでろでろになってしまった。早く食べよう。
匙を片手に、猫は肩に。両手を合わせて、
「いただきます」
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