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家に帰っても、どうにもこうにも納得がいかない。
「たまごですね?」
肩の上のたまごを鏡に映して
体を捻ったりよじったり
右に左に角度を変えてみたり
合わせ鏡をしたりと
どうにかしてよく見ようと奮闘していた。
気になって気になって仕方がない。
思い立つと蘭は、サイドに垂れた前髪を
後ろの髪と一緒に結い上げた。
まずは大学時代の医学書を読み始めた。
記憶にないし、心当たりのある文献もない。
早々に切り上げて、
お父さんの書斎の積み上げられた書籍の背表紙を
入念にチェックして気になる本をピックアップした。
医学雑誌や論文も『肩』『たまご』『しこり』に
まつわるものをしらみつぶしに読み込んだ。
それでも、蘭を納得させる情報はなかった。
次に、向かった先は柊兄さんの書棚だ。
いつもニヤニヤとだらしなさそうに思われやすい兄さんだが
その部屋は、息を飲むほどに整理整頓されていて
情報を引き出すには効率がいい部屋だ。
なので、まずはお父さんのニッチな情報をチェックしてから
柊兄さんの痒い所に手が届く情報をチェックするのが
蘭のルーティンだった。
だが、その柊兄さんの部屋をもってしても
欲しい情報は探し出せなかった。
ただ、、
柊兄さんはたまごの事を知っている様子で話しかけてきた。
いや、知らないから蘭の肩を確認したのかもしれない。
「新しい・・何か?」
流行りの、、信憑性など度外視の情報なら
ネットの情報が手っ取り早い。
監修がない思いつくまま見たままの
ダイレクトな情報がここにはある。
奇天烈な映像や不安を煽る文言から
さっき見た医学書の引用に至るまで
様々な情報が上がってきたが
やはり、蘭が納得する情報はない。
「明日、薔子姉さんのラボに行ってみようかな・・」
誰に言うでもなく呟くと肩のたまごを撫でた。
翌朝、蘭は再びお父さんの総合病院に行くと
渡り廊下で繋がっている離れのラボへ足を運んだ。
蘭はラボにいる薔子姉さんを見つけると
呼び出しのインターホンを押した。
蘭に気づいてこっちを見た薔子姉さんに
差し入れのケーキボックスを軽く掲げて合図すると
大きな瞳をさらに大きくした薔子姉さんが
パタパタと寄ってきた。
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