0人が本棚に入れています
本棚に追加
「つまんないなぁ。」
蘭は独り言と共に
盛大にソファに寝そべった。
難関大学を卒業したものの
就職も決まらず
かといって大学に残るのも気が乗らない。
蘭の一族はお金に困る事もなく
就職を煽られる事もなかったし
特に焦る事もなかった。
ただ、何をするでもなく
誰かに求められるでもなく
脳みそに穴が空いたような
真っ白な毎日を送っていた。
「ん?」
なんだか肩に違和感がある。
鏡に肩を映してみると
そら豆大のしこりができている。
「何これ?」
そっと、指の腹で感触を確かめる。
ぷくっと盛り上がっていて少し固い。
ゆっくりと圧をかけてみたが
痛くも痒くもなかった。
ただ、どういう訳か
左肩の違和感だけが強烈に主張してくる。
「ま、いっか。」
病院に、、とも思ったがなんかめんどくさい。
蘭は再びソファに沈み込んだ。
どれくらい経ったのだろう。
瞬殺で寝落ちしたらしい。
ふと、肩が気になって
そっと触ってみると、、なんだか大きい。
慌てて鏡に映すと
そら豆大のしこりは
ニワトリのたまごくらいの大きさになっている。
見た目のインパクトの割には
相変わらず、痛くも痒くもないけど・・
さすがに病院に行く事にした。
今なら、お父さんの総合病院に間に合う。
一通り検査をしてもらい
担当の先生の元へ結果を聞くために診察室に入った。
「たまごですね。」
蘭は耳を疑った。
からかわれているのかと疑いつつ
先生の表情を伺い見たがどう見ても大真面目だ。
蘭のバックに院長の影が見え隠れしているのに
不真面目な言動をしたとも言い難い。
なにがなんだかわからないまま
蘭は廊下に出た。
トボトボと歩きながら
「たまごですね・・?」
担当医の言葉をリピートしていた。
と、前から白衣をラフになびかせて
ニヤニヤしながらこっちにくる柊兄さんが見えた。
「たまごだって?」
そう言って、蘭の左側の衿元を開いて覗いた。
「や、やめてよっ。」
襟を正して睨みつける蘭に
悪びれる風もなく声を出して笑うと行ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!