雨の降らぬ町

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雨の降らぬ町

 焼けつくような日差しに目を細める。拭ったそばから溢れ出る汗が首筋を伝う。少しの風が吹くと、足元の乾涸びた雑草がさわさわと揺れた。 「もう着いてもいい頃じゃないか?」 「その筈なんだけどなぁ」 「俺はもうステーキになりそうだ」  相棒は俺の冗談なんて聞こえなかったかのように「この辺だと思うんだけどなぁ」と言うだけだった。多めに持ってきた水は半分も飲んでしまった。まだ目的地に着いてすらいないのに飲み干すわけにはいかない。 「あ! あそこじゃないか?」  相棒が指差した方角に目を向けると、乾いた荒野に大岩がポツンと佇んでいた。あれが? 確かに人が入れそうな穴が空いているようにも見えるが……   古代の碑文が刻まれた洞窟があると言うからここまで来たのに、まさかじゃないよな。 「お前にはあれが洞窟に見えるのか」 「でも他にそれらしい場所もないだろ。違ったって、日陰で休めるじゃないか」  確かに、これ以上彷徨えば本当にステーキになりそうだった。渋々ですよ、という顔をして俺は相棒のあとをノロノロと追う。 「今すぐ川にダイブしたい」 「川なんて何処にもないだろう」 「雨でも降らねえかな」 「無理だね、絶対に」  相棒が断言するのには理由があった。  この地には雨が降らない。  もう、何百年も昔から。
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