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『目が合った。 お前は気付いてなかったけど、俺には分かったんだよ。“聞こえたな” ってな。 それから しばらく、お前の観察をした。 乗っ取って、お前に成り切るために』 それで、付き纏っていたのか... 『なるべく同じ職種の奴にしようと、探した甲斐があったぜ。 俺がいた会社(ところ)より ランクが高い。 でも お前、まだ設計まで任されてねぇんだな。 まぁ、株 上げてやるよ』 クソ...  “俺” は、ケラケラと笑っていた。 それから 『って訳で、出て行きな。 早く誰かに気づかれねぇと 一生そのままかもしれねぇし、目障りなんだよ』と、顎先で 開けっ放しにしていたドアを示していた。 両目になった俺は、人通りの多い 街中や駅前に出て、瞬きを繰り返した。 でも目蓋を閉じる度に、二度と開かなくなるんじゃないか?... という不安に駆られた。 俺には、両目で見えるものと、目蓋の感覚だけしかなかったからだ。 それに誰も、俺に気付かなかった。 広過ぎるからか? 人が多過ぎるのか? 俺が最初に音に気づいたのは、仕事中だった。
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