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「ウイカ」
名前を呼ぶと、顔を俺に向けた。
緑がかった琥珀色の虹彩。日本人なのにな。
すっと細く伸びた鼻筋に 整った小鼻の下に、柔らかい厚みを持つ唇。
白い肌には手入れが行き届いている。
まだ拗ねた表情のままだけど 美人だ。
「実は、怖い事があってさ」
「え?... なに? 急に」
「いや、いいから 聞けって」
グラスを傾けている間に、ウイカは
「そういう話、信じてなくなかった?」と 不思議そうに聞いたが、“信じてなかった俺が話し出す” という事には 興味を持ち出している。
「うん。でも体験しちまったら、信じるしかなくなるだろ?
肯定派になった訳じゃないぜ。
でも少なくとも、俺が体験した事だけは」
「なによ、“肯定派” って... 」
やっと笑ったな。拗ねた顔も良かったけど。
空けたグラスに 緑色の瓶を傾けて注ぎ、テーブルに瓶を戻すと
「半月前... いや、まだ先月の終わりくらいだったかな?」と 話してみることにした。
半月前だったか、先月の終わり頃だったか。
いつから それが起こったのかは、よく覚えていない。
パチパチ と、音が聞こえる様になったんだ。
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