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瞬きに音はない。自分でしても聞こえない。
でも、宙に浮く両目が目蓋を下ろすと、一瞬その目が見えなくなって、また開かれた時に、パチ... と音が聞こえるんだ。
アレを見た時は、これまでの人生で 一番 ゾッとした。
シェーバーを投げ捨てて 飛び退ったくらいだ。
飛び退っても、鏡に映る両目の視線は 俺を追っている。
こんな事 ある訳ない... これは幻覚だ。疲れ過ぎてる... と、鏡が映す両目の方向に、恐る恐る振り返ってみると、そこに両目があった。
鏡の中に居る訳じゃない。
こいつ、会社でも コンビニでも、寝室でも...
とにかく離れたくて、開けっ放しにしていた背後のドアから リビングへと逃げ込んだ。
両手も膝も震えていて、鼓動が狂って噎せたりもしながら。
それでも何とか、寝室のクローゼットを開けて 部屋着を脱ぎ散らかしながら着替えると、スマホとカバンと、ネクタイを引っ掴んで 外へ出た。
引っ掛けていただけだった靴の踵に 自分の踵を収めながら、まだ震えてる手で 鍵を掛けて、会社に向かった。
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