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「... 自転車通学や通勤の人たちと ぶつかりそうになりながら 早足で歩いて、大通りに出たら、やっと 少し落ち着いたんだけど」 話を聞いている内に、眉をひそめて 嫌そうな表情になっていた ウイカは 「でも... 先々週に会った時は、そんな話 してなかったよね? あの時には もう、その目を見てたんでしょ?」と 寝室の方に視線を向けている。 目が居やしないか と、不安なのかもしれない。 「そう、だな。 “疲れてるからだ” って思い込むようにしてたんだよ」 だけど、一度 両目を見てからというもの、両目(そいつ)は頻繁に現れるようになった。 電車の中でも、仕事中も。外で飯を食っていても、部屋でテレビを観ていても。 パチパチという瞬きの音で気付く時もあれば、浮いている目に気付く時もあった。 両目は いつも、俺を じっと見ていた。 そして 両目は、他の誰にも見えていないようだ。 ... 俺が、おかしくなってしまったんだろうか? 幻覚や幻聴なんて、よっぽどじゃないのか? 両目は、ソファーに座っている俺の隣から 見下ろしている。 両目の 床からの高さは、いつも同じくらいだ。 立っている俺の目より 少し低い位置。 見つめる以外に 何をしてくる訳でもないけど、気味が悪い。
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