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「... それで?」 ウイカは 眉をしかめたまま、不安そうな表情で聞いている。 続き... 話しても、信じるかな? どんな言葉が返ってくるだろう? 「目が覚めたら、俺が座ってたんだ。 笑いながらね」 洗面台の前だった。 そこには、“俺” が居て、足を投げ出したまま 『やった... 』と 笑っていた。 やった というよりは、“やってやった” というように、クックッ と 込み上げてくるような笑い方から、大笑いになっていった。 俺は、そいつを見下ろすように立っていて... ただ混乱していた。本当に意味が分からなかった。 床で笑っている “俺” は 『ほら』と、鏡の方を指した。 鏡に眼を向けると、俺は、両目になっていたんだ。 頭も身体も、腕や足も何もない、両目だけに。 しばらく俺を見つめていた ウイカは 「もしかして、からかった?」と 緑がかった琥珀色の眼で 俺を睨んでいる。 「あ、バレた?」 そう返してみると、ふいと顔を背けて 「そんな話まで作って。やっぱり浮気でもしてたんじゃないの?」と、呆れながら グラスを口に運んでいる。
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