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ぼくは、ひろちかのことが特別好きでも嫌いでもない。
きっとクラスの大半がそうだった。
でも、誰もヒデトには逆らえない。
表面のヒデトは、絵に描いたような優等生だ。おそるべきことに、彼は学級委員長でもある。
裏面のヒデトは、自分を守るために平気で他人を陥れる、敵にまわしたくないナンバーワンの危険人物だ。
大人の前では表面、ぼくらの前では裏面を、ヒデトはくるくると器用に使い分ける。
だからヒデトは、ひろちかのことを表立っていじめたりはしない。
水面下で根回しをして、陰湿なやり方でひろちかのことを追い詰めていった。
あっという間に、クラスの誰も、ひろちかに話しかけなくなった。話しかけられても、ついと目を逸らすようになった。
そこにいても、いない者として扱った。
給食は、さすがに配らないわけにはいかないから、ひろちかのお膳には、ほとんど具なしのカレーやシチューがこっそり配膳された。
元々ひろちかは、休み時間も静かに本を読んでいるようなタイプだったから、教室内で起こっていることに、林先生はいつまで経っても気づかない。
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