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「おい! 無視すんなよ!」
自分はとことん無視を決め込むくせに、勝手なやつだ。
ヒデトは椅子の背にだらりと掛けていた両脚を体に引き寄せ、次の瞬間、勢いよく蹴り込んだ。
威嚇のつもりだったのだろう。皆の注目を浴びたかったのだろう。さすがのヒデトにも、怪我をさせるつもりはきっとなかった。
ヒデトに蹴り飛ばされた椅子は、ひろちかの腰あたりに勢いよくぶつかった。
Tシャツを頭から被っている最中だったひろちかの視界は遮られていて、そんな状態で身体の側面に衝撃を受けたものだから、盛大によろめき、咄嗟に伸ばした両腕から出入り口扉のガラス窓に突っ込んだ。
ガラスが割れる冷たい音が廊下に響いた。
何事かと、別の教室から先生や生徒が飛び出してくる。
ひろちかの両腕が、みるみる真っ赤な血で染まっていく。
慌てて止血する先生や叫び出す生徒。現場は騒然となった。
騒ぎを聞いて職員室から駆けつけた林先生に、ヒデトが叫んだ。
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