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「シュウが、シュウがひろちかを押しました!」
ヒデトの言葉を聞いて、先生は確かめるようにシュウを見た。
突然濡れ衣を着せられたシュウは、ほとんど状況が飲み込めていない様子で、赤らめた顔を微かに揺らしただけだった。
「誰か、他に見てた人はいる?」
先生は、教室を見渡した。
誰も、ヒデトの言葉を否定しなかった。
シュウは年齢の割に随分しっかりした体格をしているけれど、ひろちかと同様に大人しい生徒だ。
突然クラスメイトを突き飛ばすようなタイプではないと、林先生もわかっていたはずだ。
でも、シュウのその外見が、ヒデトの証言に妙な説得力を与えていた。
ひろちかは、すぐに病院に運ばれて行った。
結局、ひろちか本人が決定的な瞬間を見逃していたこともあって、何かの弾みでシュウの体がぶつかり、ひろちかがバランスを崩してしまったのだろうと、林先生は大ざっぱに結論づけた。
ひろちかは数針縫う怪我を負ったが、すぐに帰宅できたと聞いて、共通の罪悪感を抱えるクラスメイトたちは皆、ほっとした顔をした。
けれど次の日から、ひろちかは学校に来れなくなった。
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