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その時間、他クラスの先生に呼び出され、たまたま林先生は席を外していた。
その日のメニューはホワイトシチューだった。
ヒデトがスプーンでシチューを口に運び、頬張った次の瞬間、彼は盛大に顔を歪めた。
咳き込むようにして吐き出したのは、血で染まったジャガイモだった。
異変に気づいたクラスメイトの悲鳴が上がる。
ヒデトは口をぱっくり開けたままの間抜け面で、口端から真っ赤な血を滴らせていた。
シチューに、ガラス片が混入していたのだ。
騒ぎを聞いた林先生が慌てて教室に駆けつけて、ヒデトはすぐに病院に運ばれて行った。
ヒデトは、口内を数針縫う怪我を負った。ガラス片を飲み込んだ可能性もあることから、大事を取って一晩入院することになったと聞いて、共通の罪悪感を抱えるクラスメイトたちは皆、この事件に関してどういう感情を向けたら良いのかわからずに、曖昧な表情を作った。
事件の真相を探ろうと、先生たちは必死になって手がかりを探したけれど、ガラス片を混入した犯人は、結局見つからないままだった。
大きくはないけれど、この事件がニュースに取り上げられたこともあって、学校側はさまざまな対応に追われ、翌日の運動会は中止せざるを得なかった。
ぼくは知っている。この目で見ていたから。
ヒデトのシチューにガラス片を混ぜた犯人は、シュウだ。
ぼくだけじゃない。クラス内にも目撃者は何人かいて、誰も口には出さないけど、すでに5年2組のほとんどがそのことを知っていた。
林先生を除いては。
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