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ぼくは知っている。ひろちかが学校に来れなくなったのは、ヒデトのせい。
誰も口には出さないけど、5年2組の全員が知っている。
担任の林先生を除いては。
きっかけは、ヒデトが答えられなかった算数の問題を、次に当てられたひろちかがスラスラ答えたから。
勉強でもスポーツでも誰にも負けたことのないヒデトが、いつもクラスの隅のほうにいる冴えないひろちかに負けて、相当悔しかったのだろう。
「よく答えられたなあ。すごいぞ」
そう言って、林先生がひろちかに大きな拍手を送った時、当のひろちかは他人事にみたいに無表情だったけど、ヒデトは耳まで真っ赤に染めて俯いていた。
「あんなのまぐれに決まってるのに。調子に乗って、俺のことを馬鹿にしやがった」
それがヒデトの言い分だった。
ヒデトは、低学年の頃から難関中学への受験を見据えて塾に通っている。
だけど、ここのところ模試の成績が思うようにふるわなくて、教育熱心な母親からかなりのプレッシャーをかけられていた。
受験勉強のストレスのはけ口を、ヒデトはいつも探していた。
その日を境に、ひろちかへの陰湿ないじめが始まった。
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