糖度10

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「あ、真幸!おはよー!」 教室に入り、友人の柿原真幸を見つけて声をかけた。 真幸は高校に入ってから出来た友達で、かれこれ1年ほどの付き合いになる。ベータではあるものの、その爽やかなルックスと人当たりの良さで、結構モテていることを俺は知っている。勉強の方はあまり得意ではないようだけど、所属する陸上部ではかなりの成績も残しているらしい。種目は確か、ハードル走だった気がする。短距離走も勿論速くて、体育の時間にはアルファの人たちにも負けず劣らずのスピードだった。 「おぉ、陽葵か。はよー。今日も七瀬と一緒に来たのか。」 「うん!勿論!」 大きく頷いてから、自席である真幸の後ろの席に座った。 「いやー、そうして七瀬と一緒に登校してるのを見ると、俺は七瀬と陽葵が付き合ってるていうのが、陽葵の妄想じゃないんだな、て感じて安心するよ。マジで。」 「何だよそれ、俺の嘘だと思ってたわけ?酷いよ、真幸ってば。」 むっとして、へらへらと笑う真幸を睨むと、わりぃわりぃとかなんとか言いながら軽く肩を叩かれた。 チラリと綾の方に目を向けると、綾はさっさっと自席に着いて文庫本をめくっていた。あれは多分、この間話していた綾の好きな作家さんの新作だ。 …今度綾の家に行ったときに貸してもらえるかな。 「なんか七瀬ってほら結構無口だし、全然そーゆー素振り見せないじゃん?」 「綾は別に無口じゃないよ?」 「いやまぁ、お前にはそうなのかもしれんけどさ。…なんか、好きだとかなんとか言うあいつってマジで想像できねぇーつぅか、」 …好き、か。 真幸の言葉に思わず、視線を床に落とした。  俺は綾にはっきり好きだ、て言われたことがない。 そのことが実は、俺が綾と付き合い始めてから地味に悩んでることであったりする。
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