15人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
18時、私は高架広場にやって来た。予報通り雨は激しくなっていた。足早に行き交う人たちを見ていた。いつもの場所は雨に濡れ、とても歌を歌える状態ではなかった。
1人で見に行った日以来、彼とは会話をしていなかった。ライブを重ねる毎に増えて行くギャラリーが、いつも私と彼の間を塞いだ。
携帯画面の時刻は18:08。あと2分経ったら帰ろう。
「…あの」
声のした方へ視線を移すと、そこには彼がいた。予想外の事に適応出来ず、声が出ない。
「どうも」
「…あ」
さっきまで、傘を打つ雨の音がうるさかったはずなのに、今はもう聞こえない。
「雨の日は、中止…です」
「何で…」
「来てくれてる気がして…」
優しく笑う彼の顔に、鼻の奥がツンと痛んだ。
「はは。すいません。帰ります…」
涙が出そうで下を向いた。
「少し…時間ある?」
「え?」
「下のファミレス、付き合ってくれない?」
最初のコメントを投稿しよう!