第1話 忘れ物しないいようにって、とにかくいーっぱい入れたの

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第1話 忘れ物しないいようにって、とにかくいーっぱい入れたの

「甥くーん、ネクタイの巻き方、教えてー」  という声が、聞こえて、 「何で、ネクタイ巻けないんだ!」  叔父さんの学校は、ブレザーにネクタイの学校だ。   「いまだに、ネクタイを巻くことに慣れなくて・・・・」 「慣れないって、君は3年生だろーが!」  仕方ないから、俺が叔父さんのために、ネクタイを巻いてあげた。 「これで、よし」 「甥君、それから、僕ね、荷物重くて持てそうにないんだ」  と、カバンを見てみたら・・・。 「カバン多っ!」  スクールバックが、いくつも置いてあった。 「そんなにいらないでしょ? スクールバックは、ひとつあればいいでしょ。 何を入れてるの?」 「うーん、忘れ物が多くてね、忘れ物しないいようにって、とにかくいーっぱい入れたの」 「例えば、どんな?」 「木刀とか・・・・」 「授業に必要ないだろ!」 「いつでも、どこでも寝られるように、布団も入れてあるんだあ」 「お泊りでもするの!?」  これは、天然という話ではない。  確実に、馬鹿だ。 「後ね、最近、俺は学校もよく遅刻するの」 「え?寝坊したとか?」 「ううん、学校に行く道とかよくわからなくて・・・・」 「君は、そんなんでどうやってやってきた!?」 「お腹すいたなあ」 「さっき、朝ごはん食べたよね?」 「あれ、朝ごはんって言うの? 早朝ごはんだと思ってた」 「早朝ごはんなんて、あるの!?」  こいつ、普通じゃねえ。  ハーフオーガって、ここまで馬鹿なのか?   「今日は、三者面談の日でしょ? 甥君が、一緒に行ってくれるんじゃないの?」  どうだった。  今日は、祖父がどうしても用事を外せなくて、代わりに行くことになっていた。  三者面談が終われば、そのまま帰るからいっか。  こうして、二人で、ライハイツ君の行く学校に向かった。 「雷君」  担任の先生と、俺と、叔父さんの三者面談だ。  緊張するなあ。 「雷君は、卒業後進路を、どうしたいのですか?」  先生に質問されたら、 「はい、異世界に行きたいです」 「そんな進路があるか!?」 「なるほど、異世界に行きたいねえ」  先生がメモ帳に書くものだから、 「真剣にとるんかい!?」 「雷君、漢字の小テストの成績、すごくよかったよ」 「ありがとうございます」  叔父さんが、笑顔で言うから、俺は安心した。  よかった。  叔父さんも、ちゃんと勉強できているんだって。 「その代わり、ひらがなやカタカナが、書けないみたいだけど、これは一体、どういうことかな?」 「ひらがなやカタカナ、できなかったの!?」  漢字は書けて、ひらがなやカタカナができないって、どうしたらこうなるんだろう?
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