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ベッドの中で、左手に繋がっている点滴のチューブの中身は、ビタミン色で少し黄色い。この中にはどんな薬剤が入っているのだろうか。
左目蓋には眼帯があり、右膝を中心にして固いもので固定されているのがわかる。
辛うじて動かすことが出来る右腕を自分の頬にあてて、それから額を触り、自分が自分である確認をする。
『私の名前は……
ヒナゲシ』
自分の名を、そうやって呟く。
すると、自分自身への知覚が少しだけましになる。
それでも、身体の動きはままならないままだ。
自分の事が自分でままならないのは、とても困る。
それなのに、自分の顔をそっと撫でることしか出来ない。それが今の私だ。
これが何度目だろうかと、過去を振り返っても、朦朧として意識がままならない。
ともかく今は、身体に入ってくる液体が、私の身体を良くしてくれると信じて耐えるしかないのだろう。
みんなは私に話そうとはしないけど、いつだったかお医者さんがこっそりと親に話しているのを聞いたんだ。
私の病気は、骨が簡単に折れてしまうものらしい。だから、軽い転倒でも大事故に繋がる可能性がある。
さらに、脳の奥の方に腫瘍があって、いずれ身体は動かなくなるそうだ。
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