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次に目が覚めた時、私は、見覚えのない風景を目にしていた。
首を動かしてみると、絵本でしか見たことのない中世のヨーロッパ風の衣服を着た人達が、ロウソクの光に揺らめいていた。
その中の一人、麻布のローブを着た初老の人物が私を見て、何かを叫んでいる。
最初は何を言っているのか解らなかったけど、意識がはっきりしてくる毎に、なんとなく理解できるようになってきた。
「両の目に生気が宿っている!
成功だ!」
そう叫んでいるのは間違いないようだ。
今まで何度も夢見ていた。
だけど、その全てが俯瞰的なもので、風のように揺らめきながら風景を見ていた感じだった。
でも今は違う。
私は瞼を閉じてから、もう一度ゆっくりと開けた。そして、いつものように自分の頬や額を右手で追ってみる。
左手も動くようだ。
点滴のチューブは腕から伸びてはいない。
しかし、なんだろう。
この違和感は。
手も大きい
顔もしっかりしている。
『私の名前は……
ヒナゲシ。』
自分自身を確かめるように、頬を撫でながら呟いてみると、
「おおっ!
喋った!」
という声が上がる。
人々の熱気なのか、それとも灯りに使っているロウソクのものなのか、独特の香りがする。でも決して嫌なものじゃない。
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