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シャワーを終え、樹は再び寝室へとやって来た。
汐里は相変わらず気持ち良さそうに眠っている。
今までは誰も待つことのない部屋に帰り、一人で眠るのが当たり前だったはずなのに。
樹は汐里を起こさないように、自分も同じベッドの中へ潜り込んだ。
汐里の無防備で安心しきった様子を見ながら、どういうわけか自分も癒やされるのを感じてしまう。
遅い時間に帰ってくるため「おかえり」と出迎えてくれるわけではないのだが、こうやって寝顔を見ているだけで幸せを感じてしまっている。
髪や頬を撫でたい衝動に駆られながら、樹は汐里の寝顔を見ていた。
すると、その時いきなり汐里が声を上げた。
「う……あ……」
樹は、自分が彼女を起こしてしまったのかと一瞬慌てたが、そうではない。
考えているうちに、汐里は涙を流し始めた。
「ふぇ……お母さん……お父さん」
すんすん言わせて泣き始める汐里だったが、どう見ても眠ったままだ。
夢でも見ているのだろうか。
樹はこの状況をどうすべきなのか、困りながらも彼女を見つめていた。
「しおりん、どうした?」
苦しそうに泣く汐里を見ていると、起こしてやらないともっと辛い思いをしそうだ。
そう考えた樹は、汐里の肩を揺らして声を掛けた。
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