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「あ……樹くん」
ぽたぽたと流れ落ちる涙。
シーツを濡らしてしまった。
樹の顔を見て安心したのか、汐里はほっとした表情をしている。
「おかえりなさぃ」
「そんなことより、どうしたの?怖い夢でも見てた?」
心配そうな樹の顔。
「うん、あのね。お母さんとお父さんがいなくなった日の夢だったの」
汐里の両親は飛行機事故で亡くなっている。
その日の夢だなんて、この上なく辛かったに違いない。
「お兄ちゃんは呆然としてて、私は泣いてて、それで」
「もういいよ、辛かったな。大丈夫だから」
樹は、涙を流しながら話す汐里を、自分も横になったままぎゅっと抱きしめた。
抱きしめられた途端、汐里はもっと泣き始めた。
一度身体を起こし、泣きじゃくる汐里を再び抱きしめる。
小刻みに震える身体。
もしかしたら、今までもこんなふうに一人で泣いていたこともあったのかもしれない。
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