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その日、私は唐突に前世の記憶を思い出した。
「アナスタシア様!」
寝台から飛び起きた私に、専属侍女が慌てて近寄ってくる。アナスタシア。その名前に、私は確かに聞き覚えがある。それは間違いなく私の名前だった。それは間違いない。でも、今はその名前が私の名前だとは信じたくなかった。
それと同時に、前世の記憶と今世の記憶が私の頭の中に同時に流れ込んでくる。そして、理解した。
――ここが、前世の妹が嵌まっていた乙女ゲーム『キャンディと聖女と神秘の薔薇』の世界だと。それから、私が悪役令嬢であるアナスタシア・シュトラスに転生したということ。
「私……悪役、令嬢……!」
「アナスタシア様!」
専属侍女が私の身体を揺さぶる。普段の私ならば、無礼だと怒っただろう。しかし、今の私はそれどころではない。乙女ゲーム、悪役令嬢。その単語が、脳内を駆け巡って……また、意識を失った。
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