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乙女ゲーム『キャンディと聖女と神秘の薔薇』
それは私の前世の妹がやたらと嵌まっていた乙女ゲームの名前だ。ストーリーとしては、確か末端男爵家の令嬢であるキャンディが聖女候補に選ばれ、聖女選定の儀に臨む。そこで四人の異性と恋をするというファンタジーな世界が舞台のもの。最後に攻略対象から神秘の薔薇を渡されるのが見どころ……だと妹は語っていた。攻略対象は冷血なクール系王太子。俺様な悪役令嬢の兄。明るいけれどヤンデレ枠のクール王子の従者。あと一人は……よく覚えていない。うん、私興味ないことは覚えない性格だから。でも、大体枠からして騎士とかそういうところだろう。
そして、この乙女ゲームには一人のお邪魔キャラ……世に言う悪役令嬢が登場する。それがアナスタシア・シュトラス。聖女候補の筆頭であり、王太子の婚約者。高飛車で嫌な女という典型的な悪役キャラ要素に合わせ、大体のことはこなすという天才肌というオプション付き。容姿も乙女ゲームのキャラクターらしく、とても整っている。そんな悪役令嬢のアナスタシア・シュトラスに私は転生してしまったらしい。
(……いや、今はアナスタシア・ベル・キストラーか)
私は寝台に寝転がり、天井を見上げながらそんなことを考えていた。あれから数時間後。私はようやく冷静さを取り戻し、記憶の整理がついた。
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