<3・かいだん。>

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 これでも喧嘩の腕には自信がある。かけっこをやれば、隣町のサッカークラブに入っている鶴弥といい勝負ができるほど身体能力が高い自負があるのだ。殴り合いならば、背は高いけれど細身で存外力のない鶴弥をボコるなど造作もない事である。実際、昔は喧嘩してボコボコにして泣かせたこともあるほどなのだ。  そう、喧嘩できる相手ならそんなに怖くないのがあたしなのである。  しかしオバケは別だ。なんてったって透ける!変な力を持っている!殴っただけで解決できる気がまったくしない! ――ででででででも、ここで嫌がったらますますからかわれるし!!  結果、神楽は引きつった顔で固まるしかないのである。その話題は嫌だとも言えずに。 「昔々。パソコンなんて普及してなかった頃な。パソコン室の代わりにあったのは、工作室だったらしい。図工やるっていうより、お裁縫とか勉強するところだったそうだ。つか、元はここって女学校で、男はいなかったんだと」  そんなあたしをよそに、鶴弥は自慢げに話し始めてしまう。 「その工作室?にな。いつも放課後まで、一人の女の子が残ってたっていうんだ。昔の女子って、料理とか裁縫とか……良妻賢母ってやつ?そういうのになる勉強を一生懸命しなくちゃいけなかったらしい。神楽お前、大正とか昭和とかの生まれじゃなくてよかったな!」 「お前はいちいち一言多いんだよ!」 「いっでぇ!」  余計な言葉を付け足した鶴弥の後頭部にチョップを決めるあたし。いや、自分でもちょっと思ったけど!絶対やっていけんわと思ったけど!調理実習で鍋を爆発させたり、裁縫でボロ雑巾を作り上げたりとかいろいろしたけども!! 「そんな話聞いたこともないけど、それで?その居残りの女子はどうなったわけ?」  侑季が呆れたように返す。 「裁縫の針で指を突き刺して死んだとか?そんな、眠りの森の美女じゃないんだから」 「いや、もっと痛いやつ。ミシンで自分の手をぶっ刺したらしい。手の甲を貫通して、そのまんま誰にも助けを求められずにショック死したんだと。まあ、当時はケータイなんかなかったしなー」 「……そんなことが現実的に可能なのかな。いや昔のミシンって結構危ないものも多かったんだろうけど、それで?」 「誰も助けてくれなかったことを逆恨みして、幽霊として出るようになった。放課後この部屋に一人で残ってると、ミシンが暴走して襲ってくるようになったらしい!こえーよな!」 「…………」
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