<3・かいだん。>

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 どうしよう、ツッコミが追いつかない。と、見れば侑李は明らかに白けた顔でこちらを見ている。 「えっと、話が逸れに逸れてるんだけど……暗号の方に行ってもいい?」 「アッハイ」 「……スンマセン」 「まったくもう」  いつのまにか彼はスイッチを入れて、パソコンを立ち上げていたらしい。しかし、うちの学校のパソコンは未だにWindows7なのだが、大丈夫なのだろうか?すっかりセキュリティもアップデートも終わっている機種だと思うのだが。  いやしかし、役所でWindowsXPを見かけたという恐ろしい情報もあるので、それに比べたらマシなのかもしれないが――。 「僕の記憶が正しければ。稚奈ちゃんはこのパソコン教室に出入りすることが少なくなかったろ?」  青い背景に、学校のパソコンらしく少ないアイコンが表示されている。侑季はメモ帳を開いてあたし達に見せた。 「印刷は家でやったか、学校でやったか。どっちにしろ、パソコンを使ったのはまずまちがいない」 「そりゃそーだ。……って、ひょっとして手書き文字じゃなくて印刷したってのが、あいつなりのヒントだったと?」 「僕はそう思ってるよ。“た”ぬき言葉の暗号のヒントとして、狸の絵を描かないと成り立たないみたいな話をさっきしてたでしょ?なら、その“狸の絵”にあたるのが、この“印刷された文字”なんじゃないかと思ったんだ」  つまり、パソコンを使いましたよ、ということを示したかった。そういうことを言いたいらしい。  実際、彼女はスマホを持っていなかったのだから、機械系の操作は基本全てパソコンで行われたのだろうが。 「それでなんだけどさ。……みんなもパソコンは家で使うし、学校でも触るよね?文字を入力する時、どの入力方法使ってる?」 「どの、って」 「ローマ字入力のことか?」 「そう」  頷く侑季。 「ローマ字覚えるの大変だけどさ。今時は、小学生でもみんなローマ字入力するよね?」 「まあ……」  色々と思い出して、あたしは遠い目になった。パソコンを使い始めた頃は、ローマ字入力の面倒臭さに頭から火が出そうになったのをよく覚えているのである。“た”と一文字打つだけで、“T”と“A”の二文字を打ち込まなきゃいけないなんて面倒極まりない。ましてや、自分達はまずローマ字を覚えるところから始めなければいけなかったのだから、そりゃ厄介と言うものである。
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