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当たり前だが、最初は“が”の一文字を打つために、頭の中で“が”のローマ字を探し出し、それが“G”と“A”だと理解して、さらにその二つのキーを探すというところからスタートになる。我ながらよくぞそこで投げ出さなかったものだと褒めたいくらいだ。
「ローマ字を入力覚えるの、何故かかな入力よりはえーんだよな。つか、かな入力って今時使ってるの、一部の年代が上の人達だけって聞いたことが……」
あたしはそこまで言って、あ!と気がついた。
かな入力。
ようやくピンときたからだ。
「……さっきの暗号?」
メモを取り出し、もう一度よく眺めてみる。
『のににすらにもいもてらとちきちとにかい
きちののらなみにのちのなとにかいちすにもちとな』
何故すべて平仮名なのか。
そして、同じ平仮名が繰り返し登場するのはなぜなのか。
パソコンのキーボードを確認する。キーボードには、アルファベットが中央に書かれており、その右斜下に平仮名が書かれているのだ。アルファベットはローマ字を入力で、平仮名はかな入力で使う。普段自分達はローマ字入力をするので、かな入力の平仮名を気にするようなこともないわけだが。
もし、ローマ字入力モードで、かな入力表示の文字を打ち直したらどうなるのか?
「最初の“の”は、ローマ字入力だとアルファベットのK。その次の“に”はI。もういちど“に”でI。“す”はR。“ら”は“O”。ローマ字で並べると“KIIRO”……きいろ、だ。この調子で全部変換していくとこうなる」
《『きいろいめもをさがして
がっこうにかくしてあります』》
「黄色いメモを探して。学校に隠してあります……か。ってことは」
地図を取り出して、鶴弥が告げた。
「この宝地図のバッテンに隠してあるのは、黄色いメモってやつなのか。これを全部探せってわけだな。すげーぜ侑季、よくわかったな!!」
「君達とは違うからねー」
「そこは素直に褒められておけっての!このっ!」
ぐりぐり、と侑季のこめかみを抉る鶴弥。痛い痛い!と悲鳴を上げる下級生に、ついつい笑ってしまうあたしである。
謎は一つ解けた。お次は、この黄色いメモとやらを探しに行かなければ。
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