<4・しんちょう。>

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<4・しんちょう。>

 黄色いメモ、とやらを稚奈は探して欲しいらしい。  暗号の謎は解けた。次は、そのメモとやらを探しに行けばいいはずだ。できれば今日中にカタをつけたいところ。先生が見回りに来て叱られる前に決着をつけたい。  うちの小学校は、四時にチャイムが鳴ることになっている。その時間以降に学校に残っていると、見回りに来た用務員や先生に見つかると“はよ帰れ”と追い立てられることになってしまう。今日は授業数が少なかったので、六時間授業の日よりはまだ猶予があるが。  まずはおさらい。地図に書かれたバッテン印は、以下の五か所。  一階の下駄箱。  二階の図書室。  二階の自分達の教室。  三階の図工室。  四階の空き教室。以上だ。  問題は、元の地図がメモ帳サイズだったこともあり、具体的にどのあたりにメモを隠してあるのか想像がつかない、ということ。今でこそ生徒が自分達四人だけになってしまったが、かつて校舎を二つ使うほど生徒数がいた学校だ。使われていないとはいえ、靴箱の数は多い。  はっきり言って、そのすべてを探して回るのは手間であるし、なんなら玄関の場所が示してあるからといって“靴箱”の中にメモを隠してあるとは限らないはずだ。傘立ての中、靴箱の上、足元。いろいろ考えられる場所はある。 「全部しらみ潰しに探してたら、日が暮れちまうよ」  とりあえず玄関までやってきたはいいが、さっそくあたしは気持ちがめげそうになっている。ずらずらずらずら、と並んだ大量の靴箱スペースがなんとも恨めしい。 「なんかヒントねーの?ヒントヒントヒントヒントヒント―!」 「俺に言われたくないだろうけど、お前もうちょっと頭使ったらどうなんだよ。だから脳みそ筋肉だって言われんだぞ」 「うっせー、マジでお前に言われたくねーぞ鶴弥!」  そこまで言うなら、お前は何か思いついてるんだろうな?と。あたしはそう睨みつけると、鶴弥はさささささ!と素早く侑李の後ろに隠れてしまった。はっきり言おう、小柄な侑李の後ろに長身イケメンが隠れている図は、かなりシュールとしか言いようがない。 「怖い、怖いわ侑李クン!脳みそ筋肉ゴリラ女が襲ってくるわ!あたし、食べられちゃうわ、助けてっ!」 「食べられとけば?ステーキになるか焼肉になるか知らないけど」  何故か女言葉で泣きまねをする鶴弥に、冷たい目で言い放つ侑李。ていうか、ゴリラ女だというのも物理的に食われるというのも否定してくれんのか、とあたしは別の意味で腐りたくなる。
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