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べりべり、と。セロハンテープを引きはがす。ビンゴ。用具入れの天井に、黄色いメモが貼りつけてあった。
そこに赤いペンで書かれている文字は――。
「“貯”?……これ、なんて読むんだっけ」
「貯める、って字だね。音読みだと“ちょ”かな」
あたしの手元を覗き込んで侑李が言う。
「てっきり、五文字の平仮名かカタカナが来ると思ったのに。漢字なんだ、意外」
さすがにこれ一文字だけでは、答えに辿り着けそうにない。どうやら、宝探しの五か所をすべてまわり、五枚のメモを全て集めると意味のある単語になるということらしかった。
貯。そういえば、ちょきん、がこの字だったような気がする。あたしは漢字が苦手なのであんまり自信がないけれど。
「お手柄じゃん神楽、脳筋ゴリラ女のわりに!」
「殴るぞ?」
「暴力反対!暴力反対!」
褒めるふりしてしれっと貶していくのやめんか、とあたしは鶴弥に拳を振り上げる。とりあえず、宝探しの視点は悪くないということらしい。残り四か所。全て回って、答えを見つけなければいけない。
「二人とも、漫才やってる暇ないよ。先生が見回りに来るまえに、さっさと終わらせよう」
あたしが鶴弥にヘッドロックをかましているのを見て、侑李が呆れたように告げる。漫才なんてやっているつもりないのに、彼にはそう見えるのだろうか。なんだか複雑な気持ちだ。
「次は、二階の図書室だね。図書室はここ以上に探す場所が多いから、気合入れて頑張って。僕は頭働かせてるから」
「もしもーし?」
しれっと肉体労働を押し付けられてるような。しょっぱい気持ちになりつつ、あたしは黄色のメモをポケットに入れるのだった。
図書室。そういえば、彼女は図書室に入り浸ることも多かったと聞いている。残念ながら生徒数が減ってしまって、図書室の本も減ってしまったそうだが。
――今の時間ならまだ怒られないだろうし、司書の先生はまだいるかな。
司書の先生がいたら、軽く話を聴いてみることにしよう。そんなことを思うあたしなのだった。
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