<7・しゃせいかい。>

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『本を神楽ちゃんに取られた時はどうしようかと思ったけど、でも少しだけほっとしたんです』 『え?』 『だって神楽ちゃんは、影で悪口言ったりしないだろうなって。嫌なことは嫌だってはっきり言ってくれそうだなって。私にはそのほうがずっと……信頼できると思ったから』  とにかく、と彼女は手をパンっ!と叩いて続けたのだった。 『私にとってこの学校は、自分でいられる大事な場所だから。みんなにも同じ気持ちを持ってほしかったの。だから、適当に絵を描いたことに怒ってるの、わかる!?』 「あのさ」  四枚目のメモは、図工室のドアに貼ってあった。この図工室は、今はもう殆ど使われていない。鍵がかかったままなのはそのためだ。老朽化していて、天井が崩れてきそうで危ないからというのもあるらしい。  だから、自分達の図工の授業は基本的に教室で行われていた。写生会ならば外で。だから、この図工室を使ったことは一度もないのだけれど。 「稚奈ちゃんは、この学校が……大好き、だったんだよな」  メモを剥がしながらあたしは呟く。何故、ろくに使われてもいない図工室を宝物の場所に選んだのか。  多分この部屋じゃなくて、あの写生会のことを思い出して貰いたかったから、じゃないだろうか。勿論、あくまで予想でしかないけれど。 「写生会でさ。あたしや鶴弥がてきとーな絵を描いてきたら、めっちゃ怒ってたじゃん?大好きな学校だから、愛情込めて大事に描いて欲しいんだって」 「ああ、そんなこと言ってたな、あいつ」 「そうだね、覚えてるよ」  メモに描かれている文字は、“ク”。流れからして、やはりタもカタカナだったとみて間違いなさそうか。 「この宝探しゲームってさ。稚奈ちゃんなりの……この学校への、お別れの儀式なのかもしれない。本当は卒業までこの学校にいたかっただろうしさ」  メモを再びポケットにしまいながら、あたしは続ける。 「でも、そんな大事な学校なら、なんで急に来なくなっちゃったんだろうとは思うけど。こんな時、稚奈ちゃんがスマホ持ってないのが本当に惜しまれるっていうか。今までは家に直接突撃するか、家電にかければ良かっただけだったしさー」 「そうだな。このゲームをクリアしたら、答えもわかるんだろうか」  玄関。  図書室。  教室。  図工室。  ここまでで四箇所をクリアした。残るは一箇所、四階の空き教室だけだ。  地図の場所を見て、あたしは苦い顔になる。というのも、この場所にはちょっとアレな思い出があったからだ。 ――稚奈ちゃん、怖がりだったのに。……意外と楽しかったってこと、なのかな。あの肝試し。
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