<8・きもだめし。>

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<8・きもだめし。>

 先述したように。現在この学校には、生徒が四人しかいない。  そのためせっかくの四階建て校舎も宝の持ち腐れ状態で、三階と四階を使う機会がめっきりと減ってしまっているのである。三階はまだ特別教室を使うこともあるが、四階はそもそも足を踏み入れることがない。  老朽化で危ないから、というのが理由の一つ。実際、あたしが入学してくるよりも前にいくつか事故が起きているらしい。鶴弥が一年生の時には、五年生の女子が床に空いた穴にはまりこんで落下しかけるというトラブルがあったと聞いている。 「……先生は、まだ来ないよな?」  階段を上りつつ。何度も後ろを振り返りながら、鶴弥が言う。 「流石に四階に入ったのが見つかったら、俺らマジで雷だからな。危ないってのは事実だろうし。急いで黄色いメモ見つけて戻るぞ」 「おっけ」 「そうだね」  四階へ続く西階段を、そろりそろりと上っていく。四階の空き教室――廊下の突き当りの部屋。何故あそこなのかは、大体予想がついている。  きっと稚奈は楽しかったのだろう。去年の夏、みんなでやった肝試しが。 『うちの学校にも昔、七不思議的な話はあったんだよなー』  去年の夏。にやにやしながら鶴弥がそんなことを言いだしたのだった。 『まあ、二つあった校舎の片方は使われなくなっちゃったし?こっちの校舎に残ってる七不思議も、いくつかはもう機能してないんだけどな。三階の工作室もなくなっちゃったし?』 『三階?』 『ああ、その話も面白いから今度してやるよ』  今思えば、あの時鶴弥が話しかけてそのまんまになっていたのが、今日パソコン室で聞いた怪談だったのだろう。  どうやら彼は、他にも七不思議を知っていっということらしい。七不思議なるものは七つ知ると呪われるとか、六つ知った人間だけ七つ目がわかるとかそういうものだった気がするのだが、果たして彼はいくつ知っているのやら。 『まだうちの学校に生徒がたくさんいた頃。今俺らが使っている校舎の四階は、基本的に五年生が使う教室があったんだってさ。基本的に、上の方の階って五年生くらいに割り当てられる傾向にあるんだよな。六年生になったら逆に一階に戻ったりもするけど』  なんとなく、それは理解できるような気がする。多分、体力がない学年に上の方まで階段を上らせるのはしんどいからなのだろう。エレベーターなんてハイテクなもののない、ボロっちい学校ならば尚更に。  また、幼い子供ほど怪我や事故の危険があるのは道理だ。階段での転落・転倒事故を完全に防ぐことはできない。せめて、転ぶ機会が減るように、低学年を下の方の階にしたくなるのも道理というものだろう。六年生が一階に戻ったりするのは――ご褒美とか、そういうことなのだろうか?ここはよくわからないけれど。 『ある時を境にな、五年四組ってクラスがなくなったんだ』
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