<8・きもだめし。>

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 話を聴いたのは放課後のこと。曇天の日だったので、昼間なのに教室が薄暗くてなんだか怖く感じたのをよく覚えている。 『理由はな。五年四組ってクラスを作ると、何故か怪我人が多発したかららしい。教室の場所が問題かと思いきや、教室の場所をズラしても“五年四組”では事故が起きるんだ』 『じ、事故って例えば?』 『掃除していて、窓から落ちる生徒が出たりとか。逆に、五年四組の生徒が下の道を歩いていたら、校舎の上から植木鉢が落ちてきて激突するとか。あと普通に階段を滑り落ちた奴もいたし、床が抜けて足がハマったやつもいたって。あ、窓枠で股間を強打して病院送りになった女子もいたらしい』 『痛い痛い痛い痛い痛い痛い!ぜ、全体的に洒落にならなーい!!』  あたしは思わず悲鳴を上げたのだった。よく勘違いされるが、女子だって股間を強打されたら痛いに決まっているのだ。男ほど痛くないのかはわからないが、外性器なるものは女子にもあるし、そもそも恥骨をぶつけるだけで結構な激痛が走るのである。  幼い頃、アスレチックで遊んでいて股間を強打して大泣きする羽目になったあたしはよーく知っているのだ。あれは、本気の本気で痛かった。 『その五年四組って、呪われるような出来事でもあったの?……この学校が始まった時から、そんな状態だったわけじゃないでしょう?』  恐る恐る、と言った様子で稚奈が尋ねる。稚奈もあたし同様、怖いものは結構苦手だったはずだった。しかし、彼女の場合はあたしよりも“怖いもの見たさ”の感情が勝っていたらしく、こういう話の詳細を知りたがる傾向にあったのである。  あの時のあたしはと言えば、怖い話なんか聞きたくないしさっさと帰りたい、という気持ちでいっぱいだったのだが。 『その通り。五年四組では、かつていじめがあったんだ。それも、かなりタチが悪いタイプのな』  鶴弥は怖さを助長するように、声を潜める。 『というのも、生徒たちを虐めていたのは先生だったんだ。先生が、気に食わない生徒を晒上げるような形で虐めを繰り返していた。先生の標的になった子は、授業中に裸で教室の真ん中に立たされて教科書を朗読させられたり、ひたすら性格や身体的特徴を上げ連ねて罵倒されたりしたんだと。子供達は先生が怖くて、親にも本当のことが言えなかった。特に、裸の写真を撮られた子なんかはその写真をバラ撒かれたらどうしようって危惧もあったんだろうな』 『クソじゃん、その教師』 『マジでそれな。で、その“五年四組”だった子供達は、何人も鬱状態になって病院送りになったり、自殺未遂をしたり、学校に来られなくなったりしてしまった。でも、先生のいじめの証拠ってやつがなくてさ。その先生は結局、定年まで教師をやって引退しちまったらしい。まあ昔のことだから、先生ってやつの権力が大きかった可能性はある。簡単にクビにはできなかったのかも』
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