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「暗号っぽいな」
「暗号、だよね」
『のににすらにもいもてらとちきちとにかい
きちののらなみにのちのなとにかいちすにもちとな』
オール平仮名の、意味不明の文字列。
気になるのは何故か、こっちの文字は手書きではなく、印刷だということだ。この小さな紙に手間暇かけてプリンターで印刷したのである。確かに、稚奈はスマホこそ持っていないものの、パソコンは家でもよく使っていると聞く。学校のパソコンの授業でもなかなか素早いタイピングを披露してくれていた記憶があるが。
「これ、ひょっとして稚奈から俺らへのメッセージ、だったりしね?」
そして。どこか高揚したような声で言う鶴弥。
「この謎を解いてみろって、あいつが俺らに言ってる気がするんだよ。どうだ?」
「自分が不登校になった理由を、この暗号を解いて解き明かしてみせろって?」
「そうとも限らないけどな。他にもなんか理由があるのかもしれないし」
何より、と彼は地図の方を指さす。
「この地図さ。あっちこっちにバッテンで印をつけてあるだろ。まるで、宝の地図みてーじゃん。あいつ、何かこの場所に隠してあるんじゃないかと思うんだけど、どうだよ?稚奈、真面目に見えて結構茶目っけのある性格してたしさー」
宝の地図。
そういえば、国語の授業でそんなものをやったことがあったな、と思い出す。宝物を探しに行く男の子と女の子、彼らを主人公にした小説を書いてみようという授業だ。飽きて早々に投げ出した鶴弥と違い、稚奈は十枚以上の大作を書き上げていたという記憶がある。物語を考えるのが楽しくてたまらないのだ、と彼女は後で語っていた。
ああ、そういえば、こんなことも言っていたような。
『この学校に、本当に宝物が隠してあったら面白いよね!私、みんなと冒険してみたいな』
もし、あの言葉が本気だったなら。本当に、学校で宝探しを目論んでいる、なんてこともあるのかもしれなかった。
「……わかった」
ゆえに。私は頷いて言うのである。
「やってみよう、宝探し」
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