<2・あんごう。>

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<2・あんごう。>

 とりあえず、手書きの地図があまりにも小さすぎる。メモは大した文字数でないからいいとしても、これではみんなで見るにも支障がある。  というわけで、ここはパソコンが得意な侑李の出番だ。彼は帰宅時に手紙を持って返ると、スキャンして画像補正をかけた上、人数分拡大コピー。それを持って、再び学校前の公園に集合したわけである。  今日が暖かい日で本当に良かったと思う。もとより、この地域は冬でもそこまで寒くはならないのだけれど。 「すげえ、マジで見やすくなってる。ありがとな侑李」 「どういたしまして。といっても、ちょっと明るさとかコントラストとか修正しただけなんだけどね。稚奈ちゃんもなんでこんなちっさい紙に宝の地図なんて書いたんだか」 「他に紙がなかったんじゃないの?たまたま」  そんな会話をしつつ、あたしは侑李から手紙と地図のコピーを受け取った。  まず、地図の方。  学校の五か所にバッテンがつけられている。  一階の下駄箱。  二階の図書室。  二階の自分達の教室。  三階の図工室。  四階の空き教室。  一体そこに、何があるのかは不明。そもそも、地図の中には机だとか教卓だとかの詳細な場所までメモされているわけではなく、スペースのざっくりとした位置しか書かれていない(元の地図がメモサイズだから仕方ないのだが)。その場所に何があるのか、何を探せばいいのか。それがわからないと、宝探しはちょっとばかり難航しそうである。  とすれば、ヒントとなるのはもう一枚の紙の方だろう。 『のににすらにもいもてらとちきちとにかい  きちののらなみにのちのなとにかいちすにもちとな』  果たしてこれに、一体何の意味があるのやら。  現時点では、見当もつかないのが正直なところである。 「オール平仮名って、結構読みづらいのな……」  鶴弥が苦笑いをしながら言った。 「この間俺、ネットで人狼ゲームやったら、“幼子”引いちゃってさあ。全部の台詞、平仮名で喋らないといけねーの。めっちゃしんどかった。自分の台詞が読みづらい!」 「ちっちゃな頃は普通に平仮名とカタカナだけで生活してたはずなのにね。漢字覚えると、不思議と漢字がないと読みづらい現象が発生すんだよな」 「それなー」  ひょっとして、これも意味のある言葉を平仮名にしただけだったりするのだろうか。
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