<2・あんごう。>

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「どんなかんじって……あー、お道具箱のすき間にねじ込んであったかんじだね。ちょっと飛び出してたし」 「ってことは、鶴弥のアホがアホしなくても、いずれ机からぶっ飛んでたかもしれないし……なんなら、誰かが見つけてた可能性も高そうだよな」  流れるように人を罵倒すんな!と鶴弥が喚いているが無視である。そもそも、一応年上なのに一切みんなに尊敬されていないあたりがお察しなのだ。彼ほど残念なイケメン、という言葉が似あう少年もいまい。 「大体さ。理由も言わずに突然学校に来なくなって音沙汰なしってなったら、あたし達がほっとくわけがないってことくらい稚奈なら気づきそうなもんだよ。で、調べようとしたらいずれ、稚奈の机も調べてた気がするんだ。……ちょっと勇み足な理論かもだけど、この封筒はあたし達に見つけられることを前提に仕掛けられてた、って可能性はないかな」  そもそもさ、とあたしは地図をひらひらさせながら言う。 「こんな風に、学校の中をくまなく探し回れるのって誰だよ?あたしらくらいしかいないじゃん」 「それは、一理あるかも……」  ふむ、と侑李も顎に手を当てる。 「本当に隠したい秘密なら、もっと丁寧に隠す。そもそも暗号ってさ、結局は“誰かが解くこと”を想定して作ってることがほとんどなんだよね。見つけて欲しくない相手もいるけど、誰かに解いて欲しいから暗号にする。例えば、刑事ドラマのダイイングメッセージとか。犯人にバレたくはないけど、警察には気づいてほしかったら暗号で書いたりするでしょ?まあ、さすがに複雑なパズル書いてる人とか見かけると“死に際によくそんな余裕あったな!?”って笑っちゃうけど」 「あはははは、それは確かに」  暗号は、誰かに解いて欲しいから作る。  裏を返せば。その“誰か”が解けないような暗号では意味がない、ということだ。  稚奈は頭の良い子だった。小学生離れした知識もいろいろと持っていたように思う。しかし、それこそ難しい惑星の名前だとか、元素記号だとか、そういう知識が必要な暗号を作るかというときっとそんなことはしないと思うのだ。  それを解かせる相手、恐らく自分達、の知識で解けないような暗号ではまったく意味がないのだから。 「小学生でも、解ける暗号。……“た”抜き、とか?」  よく子供向けパズルで出てくる暗号だ。
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