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狸の絵が描いてあって、文字列の中から“た”を抜くと正しい文章に変わるというもの。一瞬それかと思ったが。
「……た、なんて一文字も入ってないぞ」
「で、デスネー……」
残念ながら、これは外れらしい。そもそも、それが答えならば、どこかに狸の絵が描いてあってもいいような気がする。
あと、その場合ちょっとばかり難易度が低すぎる、気がしないでもない。ならばもう少し難しい暗号なのだろうか。
「た、はないけどちょっと気になることはあるかな」
まじまじと暗号文を見つめつつ鶴弥が言う。
「なんか、平仮名が偏ってるなーって思うわけだよ。に、とか。の、とか。なんか特定の平仮名だけいっぱい出てきてるなあってかんじ。そこになんか、意図を感じるっつーかなんつーか」
「鶴弥にしては鋭いこと言うじゃん」
「鶴弥にしては、は余計!だからさ、“た”ぬきじゃないけど、た、以外を抜くんじゃないかなあとかちょっと思わなくもなかったり……」
頻出する、別の平仮名を抜くことで完成する文章。本当にそうなのだろうか。
「“のすらもいもてらとちきちとかい、きちののらなみのちのなとかいちすもちとな”。“にすらにもいもてらとちきちとにかい、きちらなみにちなとにかいちすにもちとな”。……に、との、を一個ずつ抜いて読んでみたけど、意味不明のまんまだぞ?」
「ううううん?」
わからーん!とそっくり返る鶴弥。しかし、着眼点は悪くないような気がする。
特定の平仮名の頻出。全て平仮名で書かれた文章。やはりここに、何か大きなヒントが隠れているような気がするのだが。
「……これ、印刷の文字で書かれたものなんだよね」
ぽつり、と侑李が呟いた。
「何で手書きにしなかったんだろう。地図は手書きなのに。ひょっとしたら、印刷ってのもヒントなんじゃ……。そういえば、稚奈ちゃんはスマホは持ってないけど、家にはパソコンがあるし、学校のパソコン室にも結構入り浸ってたな……」
ひょっとして、と。彼ははっとしたように顔を上げる。
「学校へ行こう、二人とも。……ひょっとしたら、アレ、かもしれない!」
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