<1・ふとうこう。>

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<1・ふとうこう。>

 自分達の学校が、もうすぐ閉校になってしまう。それは、随分前から分かっていたことだった。大体、うちの町は過疎化も進んでいるし、この小学校に通っている生徒だって全学年で四人しかいない。隣町に大きな学校があって、それがさほど遠くない距離と来れば――まあ、いずれこうなることは目に見えていたとも言えるだろう。  問題は。  まさかの廃校を目前に控えた三学期になってから、不登校になってしまったクラスメートがいるということである。 「稚奈(ちな)ちゃん、どうしちゃったんだろうな」  昼休みの時間。あたしは他のクラスメート二人と雑談していた。ちなみにあたし、猫山神楽(ねこやまかぐら)は五年生。目の前にいる小学生離れした長身イケメンくんが六年生の鳥海鶴弥(ちょうかいつるや)で、眼鏡のちんまりとした可愛い男の子が三年生の犬養侑李(いぬかいゆうり)である。  三学期になってから不登校になってしまったのは、この面子でも一番大人しい四年生、辰巳稚奈(たつみちな)。大人しいけれど真面目で芯の強い女の子であり、特に病弱だなんてわけでもない。ついでに言うならいじめ、なんてものもないはずだ。なんせ、生徒が自分たち四人しかいないのだから。大体、いじめなんて馬鹿な真似をやる奴がいたら、あたしがとっくにぶっとばしているところである。 「もうすぐ、鶴弥も卒業しちゃうし。そうなったら、この学校もオシマイで、あたし達みんなバラバラになっちゃうじゃん。正確には、あたしと侑李は同じガッコに行くわけだけどさあ。その前に、お別れ会とか盛大にしようねーつってたの、稚奈ちゃんなのにな」 「なんか、家の事情とかあるのかなあ」  侑李が心配そうな顔で告げる。 「確か、稚奈ちゃんってお父さんとお母さん、共働きだったよね?なんか仕事でトラブルがあった、とか。ほら、ここの学校が廃校になるのと同時に、仕事の都合で遠くの町にお引越ししちゃうみたいな噂もあったじゃん?それで寂しかった、とか」 「寂しいっていうのは分かるけど。だったら尚更、何がなんでもガッコに来ね?」  手の中でサッカーボールを弄びながら鶴弥が言う。 「俺や神楽だったらまあ、学校から逃げる理由もなくはないんだけどな!憎たらしい漢字の小テストから逃げるために!」 「あー、確かに。漢字テストは全力で回避したいよな」 「そこの二人はもうちょっと真面目に勉強した方がいいよ。三年生の僕に勉強教わることがあるって事実を、もうちょっと恥ずかしいと思うべきだと思う」
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