疑惑

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疑惑

 あろうことか、明剛は取引先の女性社員とプライベートで飲みに行った帰りに、休憩のためホテルに入ったという。  女性社員は明剛に無理やり誘われたと言って、慰謝料を請求してきた。明剛は酔っていたので、ホテルに入ったのは覚えていたが、無理やり誘ったわけではないから、慰謝料を支払う必要はないと、突っぱねた。  女性社員は強気だった。ならば、取引は中止だし、婚約者にバラすと脅してきた。  わたしは明剛から相談を受けた。だが、わたしは明剛の言うことが信じられなかった。なぜなら、その日、一度もわたしの電話に出なかったからだ。  明剛は実は、彼女からつきあっている彼氏の浮気癖が酷くて、別れるべきか、このまま関係を続けていくべきか迷っていると相談を受けたから、電話に気が付かなかったと言った。  なら、なぜ、プライベートで二人で会ったりしたのかと、わたしは明剛を問い詰めた。明剛はだんだん、しどろもどろになり、ついには口を閉ざしてしまった。  結局、誤解を抱えたまま、わたしは明剛と距離を置くことになった。明剛と社内で顔を合わせる度に、彼は気まずい表情をした。何度も話し合って誤解を解く機会があったはずだ。それでも、話し合わなかったことが今は悔やまれる。
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