疑惑

2/3
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
 明剛は部屋で強盗に遭遇した。逃げようとした男を取り押さえようと、揉み合いになり、犯人が所持していたナイフで刺され、死亡した。  いつもなら、わたしは明剛に連絡をとるのだが、その時は冷戦状態だったので、連絡はとらなかった。だから、明剛が発見されたのは、彼が会社を無断で欠勤したことを不審に思った同僚が部屋を訪ねてからだった。明剛の死体が発見されたのは、事件が起きてから半日ほど経過してからだったのだ。    バスの中で車窓を流れる景色を見ながら、明剛と最後に言葉を交わしたのは、いつだっただろう?どんな言葉を交わしたのだろう?そんなことを取り留めもなく考える。  ふと、車内の広告が目に入る。 「ちょっと一息つきませんか?紅茶専門店 sugar cube」  わたしは無性に喉が渇いた。法要の最中、わたしは一滴も水分を補給していなかったことに気づいた。  バスを途中下車して、わたしは目的の店に向かう。sugar cubeって、どういう意味だっけ?と考えるが、わからなかった。  sugar cubeは小ぢんまりとした喫茶店だった。席はカウンターを含めて、十席ほど。軽やかなクラシックが流れて、痩せた初老のマスターが紅茶を淹れている。  わたし以外に客はいなかった。四人掛けのテーブルに座るのが、恐縮だった。  わたしはおススメをマスターに訊ねた。  マスターはアールグレイを薦めた。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!