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私がまだ小さかった頃、私には大きなお友だちがいた。
「やあ、また暗い顔しているね。どうしたんだい」
名前は雄一といった。内気で友だちの少なかった私が近所の公園で一人ブランコを揺らしていると、彼はどこからかふらっとやって来て、そう話かけてくるのだった。
私は何故だか彼には心を開いた。〇〇くんにイジメられた。〇〇ちゃんにああ言われた。学校で起きた嫌な出来事を包み隠さず話した。両親にも言えないような話も彼には打ち明けられた。雄一くんはそんな私の話を真剣に聞き、慰めてくれた。隣りでブランコを揺らしながら。
ずいぶんと古い記憶だから定かではないが、雄一くんは中学生くらいの見た目をしていたと思う。今になって思えば、彼がいつも着ていた白いワイシャツに黒いズボンは学生服だったのかもしれない。
優しい目に穏やかな声。私は彼が大好きだった。
雄一くんは決まって夕暮れ時に現れた。小さかった私は日が完全に暮れる前に帰らなければいけなかったから、彼と過ごす時間はいつも極僅かだった。
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