0人が本棚に入れています
本棚に追加
一人ブランコを揺らす。
故人に会えるはずもないのに、わざわざ夕刻を選んだ。
懐かしいなぁ。
瞼を閉じれば今でも彼の顔を鮮明に思い出せた。私がこうして一人でいると、彼はどこからともなくやって来て――。
「やあ、暗い顔をしてどうしたんだい」
と、いうのだ。あれ?
私はハッとして瞼を開いた。雄一くんの声を聞いた気がした。幻聴じゃない。はっきりと耳に残っている。隣りでブランコがキィ、キィと音を立てて揺れていた。誰も居ない。風も無い。
「雄一くん?」
私の問いかけに応える様に、心なしかブランコの揺れ幅が大きくなる。
恐怖心は無い。それよりも嬉しいのだ。もう会えないと思っていた親友との再会が。
「また会えたね。ごめんね、来るのが遅くなっちゃった。どう、私、老けたでしょう。こんなオバさんになっちゃって」
傍から見たら私は一人で会話している頭のおかしい人に見えるかもしれない。どうでも良かった。話し始めたら止まらなかった。何時間でも、何日間でも話せそうだ。やっと謝れた。私はやっと、謝れたのだ。長年付き纏ったしこりから開放されたのだ。
「私ね、ずっとあなたにまた会いたいって思ってたの。でもあなたを裏切ったみたいで、怖くて……、なかなか来れなかった」
ああ、雄一くんの相槌が聞こえる。うん、うん、って。懐かしいなあ。
「どうして泣いてるのかって?ふふ……、歳をとると涙腺が緩むのよ。そうだ、雄一くんに聞いてもらいたい事があるの。何から話そう……、ああ、沢山ありすぎて困っちゃうな――」
最初のコメントを投稿しよう!