3人が本棚に入れています
本棚に追加
でも、意外と、晴は自転車置場で、俺の自転車の荷台に腰掛けて、バッグ、膝の上に抱えて待ってた。ツンデレちゃんなんだから、も~~~。
他の自転車通学のバスケ部のヤツらが無言で、俺の肩や、背中や、頭を叩いて、自転車にまたがり、走り去って行く。
二人っきりになって、晴が荷台を下りる。俺は大きなビニール袋に入れたバッグを荷台にヒモで、ぐるぐる巻きにして、自転車のカギ開けて、チェーンキー外して、自転車押して、歩き出す。俺はカッパを着てる。晴は傘さして、歩き出す。
雨、降ってなかったら、自転車二ケツで、帰れるのになあ、って、今日は足、ガクブルで、晴が細くて軽っ軽でも、運搬はムリか。
「今日、貸出当番?」
「ううん。図書館だよりを印刷して、クラスごとに仕分けてた」
「そっか。お疲れちゃん」
晴は帰宅部で、いっつも、さっさと帰っちゃうんだけど、図書委員の放課後の貸出当番だと、下校時刻までいるので、下校デートができる。
1年ん時、クラスがいっしょの時は、休み時間ごとに、いろんなこと、話してたのにな。2年で文系・理系でクラスが分かれちゃってからは、話すことが、どうしても近況報告になってしまう。晴は、iPhone、バッグに入れっ放しの不携帯電話なんで、LINEしても、既読すらつかないスル~。
晴は俺と話すために晴は、傘を少し傾けてて、制服のブレザーの細い肩に、降りかかる雨の細かい粒粒が、街灯に照らされて、きらきら光って、キレイだ。
「肩、濡れちゃうよ」
って言った方がいいんだけど、俺は言えない。180cmの俺と、162cmの晴は、並んで歩くと、顔を見れなくて、でも、時々、晴が俺を見上げて、目が合っただけで、うれしくなってしまう。
……あ~あ。ゆっくり歩いたのに、学校から徒歩10分ちょっとの、そびえ立つタワーマンションに着いちゃったよ。
「じゃあ」
言って晴は、さっさと、タワマンの大きなガラスのドアに向かって歩き出す。
「ばいばい」
俺は言った。晴は、振り返ってもくれない。仕方ないな!ツンデレなんだからぁ。俺は自転車にまたがる。はあ~。ちゅーはムリとして、ハグハグくらいしたいなあ。
ペダルを踏み込む。足が全体的に、痛え。
――晴には、「未来は変えれる」って証明するために、1勝しようとしてるなんて、言ってない。
学年1位に君臨する暗記力のある晴が、去年の夏休みに俺と話したことを、覚えてないわけがない。万が一、「そんなこと覚えてない」って言うならば、それはツンデレてるだけである。(断言)
どっちかってゆ~と、俺に気を使って、「そんなに、がんばらなくてもいいよ」なんて言われちゃうのが、モチベーション下がる。理想は、「がんばって!!」って応援してもらうことなんですけど、公式戦も、練習試合も、日程、教えても、見に来たのに、来てないふりするツンデレちゃんなんで。
春季大会なんか、応援に来てたうちの母ちゃんに見付かって、「見て見ぬふりしてください」って、頼み込んだんだって~。
「『見て見ぬふりしてください』って言われてもね~。あんなかわい子ちゃん、一目見たら、忘れらんないよね~」
って俺に言って、うちの母ちゃん、すっかりバラしてっから。
でも、それを晴に言ったら、マジで来てくれなくなっちゃうので、一人で、えへえへするだけの俺だ。マジでヤバいのは、自分でわかってるから、見て見ぬふりしてくれ。
最初のコメントを投稿しよう!