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俺たちは、足、がくがくぶるぶるで、必死に立って、散々、男子高校生を痛めつけてくれたお姉さまたちに、
「ありがとうございました!」
って、ごあいさつした次の瞬間、全員、体育館の床に座り込んで、寝っ転がった。
「想太」
紡姉に呼ばれて、俺は、ぴょこんっと、起き上がった。えっ?!何で俺の名前?それも呼び捨て?
「今日、みんな、うち、泊まるんだ。バーベキューするから、来なよ」
「来ねえよ!!」
砂川が寝っ転がったまま、怒鳴り返す。――ああ、「そうた」って、砂川爽太でしたか。
「そうた」と、紡姉に呼ばれて、俺、今宮想太と同じように、反射神経で起き上がっちまった、若林湊太、守谷聡太、陸奥奏汰、先山蒼太、高知空宇大、井口壮太は、再び寝っ転がった。
3年に3人、2年に2人、1年に3人、そうたくんがいるバスケ部。みんな、漢字がちがうのが、すごすぎる。ちなみに、俺のクラスには、同じ漢字の想太くんがいる。
「爽太が来なくっても、おじさんとかおばさんとか、誘っちゃうよ。爽太、おうちで独りぼっちだよ。だいじょうぶ?こわくない?」
紡姉は、しゃがみこんで、寝っ転がってる爽太くんの顔を覗き込む。
「こわくねえよっ!」
寝返り打って、横向きになって背中を向ける砂川。相手は、年上…つっても、1歳上なだけだもんな。幼なじみなら、こんな感じか。
俺の中で、点と点が線で、つながった。
俺は起き上がると、とっても大きな大の字になっている弟・紡の腕を引っ張って、起き上がらせ、立ち上がらせ、ぐわ~~~~っと引きずって行く。
「何何何?」
開いてる体育館の扉から外に、紡を引きずり出すと、俺は小声で聞いた。
「砂川の好みのタイプって、菜々緒つってたよな?」
「何だよ?いきなり。――あいつ、女優とかアイドルとか、大体、ディスるのに、菜々緒だけは『キレイだよな』って、ホメる」
やっぱり点と点が線で、つながった~~~!!
「あいつ、紡に身長、追い越されて、自分の身長、伸びないのに絶望して、バスケ、やる気なくしたって、言ってたよな?」
「うん…」
紡がうなずいて、首を傾げた。
「それと菜々緒が、何の関係が?何の話?」
弟、鈍感だな!!爽太は、お前の姉ちゃんのこと、好きなんだよ。多分。
好きな人が、自分より背が高くて、自分よりバスケ上手かったら――…俺なら追いつきたくて、がんばるけどな…。爽太くんは、いじけちゃったんだね~。
「何なんだよ、今宮?」
弟くんは、ゼンッゼン!気付いてない。ぬお~。ここで、俺がヘンなこと言っちゃうと、幼なじみのビミョーなバランスが、崩れちゃうぞ。俺は、慎重に、言葉を選ぶ。
「なあ、お姉さんに言って、『試合、がんばって』とか『勝ってね』とか、言ってもらえね?砂川に。」
「バカか。そんなこと、姉貴が言ったら、逆効果だって。爽太、『勝たねえよ!』って、絶ッ対、言うって。下手すっと、試合、出てくれなくなっちゃうよ」
ぬぬぬう。ツンデレのトリセツを知り尽くしてる、この俺でさえ、使いこなせないか、砂川爽太!!
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